社会保険労務士 五藤事務所

                              雇用保険の活用

4、雇用継続給付
雇用継続給付には、60歳〜65歳の労働者向け、育児休業取得者向け、介護休業取得者向けの3種類の給付があります。

@ 高年齢雇用継続給付
1、高年齢雇用継続基本給付金

60歳到達前から継続して被保険者として雇用されている場合等に、60歳到達以後の賃金が到達前より一定割合以上減少したときに支給されます。
(1)支給要件
一般被保険者であって、次の要件をすべて満たすこと。
ア、60歳に到達した日又はその日後に、被保険者期間が5年以上あること
イ、支給対象月に
支払われた賃金がみなし賃金日額を30倍した金額の75%未満であること
ウ、支給対象月に
支払われた賃金の額が支給限度額(平成23年8月改定額344,209円未満であること
(2)支給対象月
次の全ての要件を満たす月を高年齢雇用継続基本給付金の支給対象月とします。
ア、60歳に到達した日の属する月から65歳に到達する日の属する月までの期間であること(※)
イ、その月の
1日から末日まで引き続いて被保険者であること
ウ、その月の
1日から末日まで引き続いて、育児休業基本給付金又は介護休業給付金の支給対象となる休業をしなかったこと(月の一部だけの休業ならばこの要件を満たす)
※60歳に到達した日にそれ以前の被保険者期間が5年未満であっても、その後継続雇用されることにより被保険者期間が5年に達したときは、その月から65歳に到達する日の属する月までの期間とする。

(3)みなし賃金日額
被保険者が60歳に到達した日((2)※に該当する者は5年に達した日)を離職日とみなして算定した賃金日額を指します。
みなし賃金日額の
上限額は15,060円、下限額は2,330円で、上限を超え又は下限を下回る場合は、それぞれ上限額、下限額が適用されます。

(4)支給額
ア、原則
支給対象月に支払われた賃金額÷(みなし賃金日額×30)×100(単位:%)
により算出された比率により下表のようになります。
比率 支給額
61%未満 支給対象月の賃金額の15%
61%以上75%未満 支給対象月の賃金額に比率に応じた支給率(別表)を乗じた金額
75%以上 支給しない
※計算例を別表に併せて示してあります。ご参照ください。

イ、例外
(@)上限額
給付金の額と賃金の額の合計が支給上限額344,209円を超える場合は、本来の給付金の金額から支給上限額を超えた金額を差し引いて支給されます。
(A)下限額
支給対象月の高年齢雇用継続基本給付金として算出された金額が、
1,864円(みなし賃金日額の下限額2,330円の80%)以下のときは、給付金を支給しません

(5)申請
ア、初回
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票
・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
・雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書
などの書類を、
支給対象月の1日から4か月以内に勤務先の所在地を管轄するハローワークに申請しなければなりません。
イ、2回目以降
高年齢雇用継続給付支給申請書を勤務先の所在地を管轄するハローワークに提出しなければなりません。

※労使協定の締結により、給付金の支給申請を事業主が代行して行うことができます。

(6)その他注意事項
本来比率が75%以上であるため高年齢雇用継続基本給付金が受給できない労働者が、支給対象月において、
非行・傷病・事業所の休業などにより賃金額が減少し結果的に比率が75%未満になっても、それは一時的なものであるため、減少した分の賃金も通常通り支払われたものとみなされて高年齢雇用継続基本給付金の支給対象にはなりません

2、高年齢再就職給付金
60歳到達以後に一定以上の支給残日数を有して再就職したことにより被保険者になった場合には、再就職後の賃金が前職の賃金より一定割合以上減少したときに支給されます。
(1)支給要件
次の要件のすべてに該当すること。
ア、60歳到達以後に安定した職業に就くことにより被保険者となったこと
イ、前職の離職の日における
算定基礎期間が5年以上あること
ウ、前職の離職による受給資格に基づく
基本手当の支給を受けたことがあること
エ、
再就職後の支給対象月の賃金額が、ウの基本手当の算定基礎になった賃金日額を30倍した金額の75%未満になったこと
オ、再就職日前日において基本手当の支給残日数が100日以上であること
カ、
再就職後の支給対象月の賃金額が、支給限度額344,209円未満であること
(2)再就職後の支給対象月
次の要件のすべてを満たすこと。
ア、再就職日の属する月から、支給残日数に応じて下記の期間経過する日の属する月までの期間内にある月
支給残日数 100日以上200日未満 再就職日翌日から1年
200日以上 再就職日翌日から2年
※1年又は2年が経過する前に65歳に到達した場合はその到達日の属する月までとする
イ、その月の1日から末日まで引き続いて被保険者であること
ウ、その月の
1日から末日まで引き続いて、育児休業基本給付金又は介護休業給付金の支給対象となる休業をしなかったこと(月の一部だけの休業ならばこの要件を満たす)
(3)支給額
高年齢雇用継続基本給付金の支給額と同じ(上記参照)。
ただし、「みなし賃金日額」を「基本手当の算定基礎になった賃金日額」に読み替える。

(4)申請
ア、初回

・高年齢雇用継続給付受給資格確認票
・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
などを、再就職後の
支給対象月の1日から4か月以内に、勤務先の所在地を管轄するハローワークに申請しなければなりません。
イ、2回目以降
高年齢雇用継続給付支給申請書を勤務先の所在地を管轄するハローワークに申請しなければなりません。

※労使協定の締結により、給付金の支給申請を事業主が代行して行うことができます。

(5)その他注意事項
本来比率が75%以上であるため高年齢雇用継続基本給付金が受給できない労働者が、支給対象月において、
非行・傷病・事業所の休業などにより賃金額が減少し結果的に比率が75%未満になっても、それは一時的なものであるため、減少した分の賃金も通常通り支払われたものとみなされて高年齢雇用継続基本給付金の支給対象にはなりません

A 育児休業給付
育児・介護休業法に規定する育児休業を取得した
一般被保険者には、その期間、育児休業基本給付金が支給されます。
育児休業給付については、「育児のページ」で詳細を掲載しています。そちらをご参照ください。
→「育児のページ(育児関係の給付)」へ

B 介護休業給付
育児・介護休業法に規定する介護休業を取得した一般被保険者には、その期間、介護休業給付金が支給されます。
1、支給要件
一般被保険者が、
ア、対象家族を介護するための休業をしたこと
イ、
休業開始日前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か以上あること
2、対象家族
家族のうち、次の者を指します。
ア、配偶者(内縁関係にある者を含む)
イ、父母及び子並びに配偶者の父母
ウ、被保険者が
同居し、かつ扶養している、被保険者の祖父母・兄弟姉妹・孫
3、みなし被保険者期間
介護休業開始日を被保険者資格喪失日とみなして、介護休業開始日前日からさかのぼって1か月ごとに区切られた期間に、賃金支払基礎日数(労働日・有休取得日等賃金が支払われた日数)が11日以上ある期間を、みなし被保険者期間1か月として計算します。

4、支給単位期間
介護休業給付金は「支給単位期間」について支給されます。
支給単位期間は、通常は
介護休業開始日(又は応当日)から翌月の応当日(例:8月15日の翌月の応当日は9月15日)の前日までの期間を指し、介護休業終了日を含む月については応当日(又は休業開始日)から終了日までになります。

5、支給日数・支給額
(1)支給日数
・支給単位期間が、応当日(又は休業開始日)から翌月の応当日前日までの場合…30日分
・支給単位期間が、応当日(又は休業開始日)から休業終了日までの場合…
その間の日数分
※計算上、支給単位期間内の実際の日数に関わらず、支給単位期間1か月=30日と換算します。
異なる要介護状態ごとに、3か月未満の休業を2回以上した場合は、その支給日数が通算93日に達するまで、2回以上支給されます。
(2)支給額
休業開始時賃金日額×支給日数×40%
(3)休業開始時賃金日額
介護休業開始日前日を離職日とみなして失業時と同様に賃金日額を算出したものを指します。
この場合は、対象者の年齢に関わらず30〜44歳の離職者の
賃金日額上限額14,340円が適用されます。また、賃金日額下限額は2,330円が適用されます。

したがって、介護休業基本給付金の支給日額は、支給調整がなければ
1日932円〜5,736円、30日で27,960円〜172,080円の範囲内になります。

(4)使用者から賃金が支払われた場合の支給調整
介護休業期間中に使用者から賃金が支払われた場合は、その
賃金額により介護休業給付金の金額を調整します。
支給単位期間に支払われた賃金額÷(休業開始時賃金日額×支給日数)
の値により調整額が決定します。
上記式の値 支給額
0.4以下 調整なし(原則通り支給)
0.4超0.8未満 (休業開始時賃金日額×支給日数×80%)−支払われた賃金額
0.8以上 支給なし
(5)支給申請
・介護休業給付金支給申請書
・休業開始時賃金証明票
を、
介護休業終了日翌日から2か月を経過する日の属する月の月末までに、事業所を管轄するハローワークに提出します。

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