協議離婚は、夫婦双方の話し合いで丸く収まれば終わりですから、傍から見ればこんな簡単なことはありません。しか
し、当事者にとってはその結果は妥協と我慢の産物であり、後々新たな紛争の種をまき散らす時限爆弾になることがあ
ります。その原因は夫婦双方のみの話し合いであって第三者が入っていないことにあります。ここでは、夫婦双方でも
満足が行く話し合いの方針についてまとめてみましょう。
@ 話し合うべきことは何か
「離婚時の交渉事項」で挙げたように、離婚時に定めておくべき項目は最低5つありました。
1、慰謝料 2、財産分与 3、親権・監護権 4、養育費 5、子との面会交渉権 |
の5つです。相手の資力から考えて慰謝料を請求できる状態になかったり、養育費が少額になることはありますが、簡単にあきらめ
ることなく、粘り強く話し合いを進めていくことが必要です。
A 根拠を示そう
話し合いの中で、闇雲に慰謝料や養育費の金額を提示しても相手は納得しません。また、親権・監護権についても子の生育上母
親の存在はほぼ絶対的ですが、生育させる資力の裏付けがなければ親権・監護権も簡単には得られません。
そこで重要になるのが、自分が主張することの根拠を示すことです。
1、慰謝料は先に示したように、一般的相場は200〜500万円ですが、有責者の責任の重さと婚姻年数を基に、大阪弁護士会が慰
謝料の目安金額を示しています(下表、単位:万円)。
責任の重さ | 1年 未満 |
1〜3年 | 3〜10年 | 10〜20年 | 20年 以上 |
慰謝料の金額は、もちろん責任の重さと婚姻年数だけで決まるものではありませんが、ある程度の目安としては大変有用なものであると思います。 |
軽程度 | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 | |
中程度 | 200 | 300 | 500 | 600 | 800 | |
重程度 | 300 | 500 | 700 | 900 | 1000 |
2、財産分与は家庭の全財産から夫婦双方の特有財産を差し引いて30〜50%を乗じた金額です。概算金額を計算するために、
「財産分与額簡易計算表(Excelファイル)」をダウンロードしていただけます。
3、親権・監護権は、離婚後の収入の見通し及び支出の予定を、養育費及び慰謝料を含めて計算して、子を養育するのに十分な資
力が得られることを示しましょう。
4、養育費は「養育費簡易計算表のダウンロード(Excelファイル)」で計算できます。
5、子との面会交渉権を拒むのであれば、過去にあった相手の言動で、子に悪影響を及ぼすと推測されるものを挙げ連ねることが
必要です。この「悪影響を及ぼすと推測されるもの」は、子を監護しない親の権利を制限する意味合いがあることから、子への虐待
や脱法行為など、相当なものに限られます。
B 離婚協議書を作成する
上記の1、〜5、の項目について大筋合意ができたら、離婚協議書の第一案を作成します。
離婚協議書作成例(PDFファイル)
調停離婚では調停調書が、裁判離婚では判決書謄本が発行され、それが離婚時の決めごととして証拠になりますが、協議離婚で
は二人の話し合いだけで決めごとが決まりますから、その証拠として離婚協議書を作成します。
第一案を作成したら、双方一読し、細かい文言や条件に異議がないか確認します。異議があれば当該部分を修正し再度確認し、
双方納得のいくまで修正を繰り返します。
たいていの場合、A4用紙で作成すると複数枚になりますから、ホチキスや製本テープで書面左側をそろえて止め、各頁見開いたと
きの頁の境目に夫婦双方の割印、製本テープ使用時は裏表紙のテープの境目にも割印を押します。
なお、一般の離婚協議書は法的強制力がないため、離婚協議書で定められた債務を債務者が履行しない場合は裁判所の手続
を経なければ差押などの強制執行の手段を用いて債権回収することはできません。その手間を省くためには、強制執行認諾約款
付公正証書による離婚協議書の作成が有効です。詳しくは「公正証書の利用例」で説明します。