離婚の原因は夫婦それぞれですが、家庭裁判所で使用する「夫婦関係調停申立書」では、離婚調停申立の動機として
13の例を挙げています。ここでは、それらと民法第770条1項に定める法定離婚事由とのかかわりを見ていきます。
@ 離婚調停申立の動機13例
「夫婦関係調停申立書」では2面の最後に表示されています。
1 性格が合わない 2 異性関係 3 暴力をふるう 4 酒を飲みすぎる 5 性的不調和 6 浪費する 7 異常性格 8 病気 9 精神的に虐待する 10 家族をすててかえりみない 11 家族との折り合いが悪い 12 同居に応じない 13 生活費を渡さない 14 その他 |
A 法定離婚原因(民法第770条1項)
「離婚の方法」では、離婚訴訟を提起するには「離婚につき正当な事由」が必要であることに触れました。その「正当な事由」が
下記に示す民法第770条1項各号に定められた法定離婚事由です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 |
1、不貞な行為…動機2
一般的には「浮気」・「不倫」と言いますが、この「不貞な行為」に該当するためには、
・夫婦関係が破綻する以前に
・配偶者以外の異性と
・肉体関係をもつこと
の3つの条件を満たす必要があります。そのため、
・既に別居状態にある配偶者が自分以外の異性と肉体関係をもつ
・配偶者以外の異性と二人きりで定期的に食事をする
といったことは、「不貞な行為」には該当しません。
2、悪意の遺棄…動機10・12・13
民法第752条では、夫婦は相互に「同居・協力・扶助」の義務を負うと定められています。その義務を不当に果たさないことを指し
て「悪意の遺棄」と言います。
「悪意の遺棄」に該当する事例としては、上記の動機bノ表示のある事項の他、
・健康な夫が働こうとしない
・姑との折り合いが悪く実家に帰ったままである(11関連)
・夫が妻を虐待して家から追い出す(又はその逆、3・9関連)
が挙げられます。
「悪意の遺棄」に該当しない事例としては、
・夫婦関係修復のため冷却期間として別居する
・子どもの教育上必要な別居
・仕事上の理由による同居不可能な状態
が挙げられます。
3、生死が三年以上明らかでない…動機10・12
いわゆる失踪状態です。民法第30・31条では7年で死亡とみなすと定めていますが、離婚の要件としては3年でよいことになってい
ます。
この要件を利用して離婚する場合は、あらゆる手段を用いて生死の確認を試みたという証拠を示す必要があります。
・戸籍の附票を利用して配偶者の足跡をたどり、記載された住所地を訪ねたり、郵便を送付したりする
・知人や勤務先などに陳述書を作成してもらう
・警察署に行方不明者届(旧・捜索願)を提出し、受理証明書を発行してもらう
といったもので生死不明の事実を証明できます。
4、強度の精神病…動機8
一般的に裁判所は、強度の精神病患者には離婚につき何ら責任もなく、また看護を必要とする場合が多いため、強度の精神病を
理由とした離婚請求を認めない傾向にありますが、下記の条件を満たす場合は認めることもあります。
〇「強度の精神病」に相当する病気
・統合失調症(早期性痴呆) ・脳梅毒(麻痺性痴呆) ・双極性障害(躁うつ病) ・偏執病 ・初老期精神病
※これ以外の病気を原因とする場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」扱いになることがあります。
〇「回復の見込みがない」とする目安
・障害者手帳1級が認定される程度の状態
→他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度
〇離婚を認める条件
・病気のため、夫婦生活の本質的な義務が果たせない状態にある
・治療が長期間に渡っている
・離婚を請求する配偶者が、これまで誠実に療養、生活の面倒を見てきた
・離婚後の看護者、療養費負担者など、具体的に看護を引き継ぐ者が決まっている
5、婚姻を継続し難い重大な事由…動機1・3・4・5・6・7・8・9・11・14
1、〜4、以外に婚姻を継続し難い重大な理由があれば、離婚訴訟が認められます。例として、
・性格の不一致・性的不調和により夫婦関係が修復不可能な状態にまで至った
・DV・飲酒による暴力癖・精神虐待により医師の証明を受けることができる程度の肉体的・心的傷害を負った
・嫁姑問題により夫婦関係まで冷め切ってしまった
・配偶者のギャンブル・投資のための浪費により夫婦生活が破綻した
・異常性癖・同性愛者・潔癖などによる性交不能又は長期に渡る性交拒否により夫婦関係が悪化した
・夫婦いずれかが実家に入りびたり夫婦共同生活が成立しない
・宗教・特定の主義主張に傾倒し、その活動により夫婦生活が破綻した
・その他、刑務所での服役、不妊による夫婦関係悪化など
が挙げられます。いずれも、夫婦関係が修復不可能な状態にまで至っていると認められることが必要です。