社会保険労務士 五藤事務所

                                賃金の基礎

            @ 賃金の概要

賃金と一口に言っても、いろいろな仕組みがあり、各企業ではそれらを組み合わせて賃金制度
を形成しています。ここでは主な分類について説明します。

A 賃金の計算単位による分類
→年・月・日・時間のいずれで計算するかによる分類です。
  ・年=
年俸制
   →年俸制はプロ野球やサッカー選手で使用されているのは有名ですが、一部大企業では導入されています。
     1年間の総支給額をまず決定しておき、賞与を加味した月数(賞与が月支給額の3か月分相当なら15か月)で割った金額
     を毎月給与として支給します。

  ・月=月給制
   →日本では一番ポピュラーな給与制度です。月給制も厳密には2つに分かれます。
    ・完全月給制:1か月の総支給額を決定しておき、
欠勤があっても減給せず決定した総支給額を支給します。
    ・日給月給制:1か月の総支給額を決定しておき、
欠勤があった場合は欠勤日数分の給与を差し引いた金額を支給します。
             単に「月給制」と言った場合の多くはこちらを指します。
  ・日=
日給制
   →日給月給制が減額方式であるのに対し、日給制は労働日数に応じて賃金を計算する積み上げ方式です。
     1日の総支給額を決定しておき、労働日数を乗じるという、大変シンプルな計算方法です。
  ・時間=
時給制
   →時間単位で賃金を決定しておき、労働時間を乗じるという、こちらもシンプルな計算方法です。
     パート・アルバイト・派遣社員等の非正規社員に多く用いられています。

B 賃金の発生原因による分類
→所定労働に伴い発生するものか、所定労働外の原因に伴い発生するものかによる分類です。
  ・
基準内賃金(所定内賃金)
   →会社の所定労働時間分勤務することにより生ずる賃金です。基準内賃金はさらに、基本給と諸手当に分類されます。
    ア 
基本給
      →賃金の根幹をなす部分です。基本給はさらに会社の方針によって下記のように細分化されます。
      ・
年齢給勤続給:年齢・勤続年数によって定められた賃金。年功序列制度の名残。
      ・
職能給:会社が評価した能力と階級によって定められた賃金。多くは号俸表による。
      ・
職務給:当該社員が遂行する職務に対して賃金を定めたもの。
      ・職種給:事務職・営業職・研究職等、社員の職種により異なる賃金設定をして定めたもの。
    イ 諸手当
     →現在は成果主義が盛んなため福利厚生的な手当は減りつつありますが、主に下記のようなものがあります。
      ・
役職手当:リーダー・課長・工場長等を対象に、その役職の責務に応じて金額を定められた手当。
      ・
資格手当:会社が業務に不可欠と認める資格を持つ者を対象に支給する手当。
      ・
家族手当:配偶者・子をもつ社員に扶養補助の目的で支給する手当。減少傾向にある。
      ・
住宅手当:家賃・住宅ローンの補助の目的で支給する手当。減少傾向にある。
      ・
皆勤手当:1か月等定められた期間内の所定労働日全て出勤した者を対象に支給する手当。
      ・
目標達成手当:販売額・契約数等一定期間の目標を達成できたものを対象に支給する手当。賞与に回すことが多い。
      ・
調整手当:勤務地による物価格差や余分にかかる経費などを補助する目的で支給する手当。

  ・
基準外賃金(所定外賃金)
   →会社の所定労働時間以外で生ずる賃金です。通勤手当は基準内賃金に含める場合もあります。
    ア 
時間外手当
     →
労働基準法第37条に従って支給される諸手当を指します。
      ・
時間外手当労働基準法第32条の法定労働時間を超える労働に対して支払われる手当で、基本賃金の25%増。
      ・
深夜手当:原則22時から5時までの労働に対して支払われる手当で、基本賃金の25%増。
      ・
休日手当労働基準法第35条の法定休日の労働に対して支払われる手当で、基本賃金の35%増。
     ※時間外労働が深夜時間帯に及んだ場合は時間外手当と深夜手当
併せて50%増を支給、休日労働が深夜時間帯に及
      んだ場合は休日手当と深夜手当
併せて60%増を支給しなければなりません。
    イ 通勤手当
     →社員が通勤のために支出した費用を弁償する目的で支給するものです。
支給しないことや上限を設けることは違法で
      は
ありません

C 特別な賃金
→厳密には賃金ではありませんが、賃金が「労働の対償として使用者が労働者に支払う」(労働基準法第11条)ものという定義に
 照らし合わせるとこれらも賃金に含まれると言えます。

  ・賞与
   →近年では中小企業を中心に経営状況の悪化などの原因で支給を取りやめる企業が多く、さらに非正規社員には支給しな
     いなど、賞与の支給を受ける労働者は減少傾向にある。
     賞与を支払う多くの企業では当期の業績を反映させているが、成果主義を導入している企業では加えて個人の評価を加
     味している。
  ・退職金
   →大企業を中心に高額な退職金を受け取る退職者もいますが、中小企業では中退共、建退共等の退職金共済に加入して掛
    け金を支払い積み立てることで将来の退職金の支払いに備える企業もあります。一方で退職金は全く支払わない企業もあ
    りますが、退職金は法定の支給金ではありませんから
就業規則等に定めがなければ支払わなくても違法ではありません

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