社会保険労務士 五藤事務所

                               老齢年金の支給額

長い間一生懸命働いて、ようやくたどり着いた定年、そして年金の支給開始。一番気になるのは、その年金がいくら自分の懐に入ってくるかということではないでしょうか。年金受給間近の人も、まだまだ年金をもらうのは遠い未来だという人も、どれくらい保険料を支払い続けるとどれくらいの年金がもらえるのか、国民年金と厚生年金について少し考えてみましょう。 
@ 老齢年金の支給開始年齢
原則として、老齢年金の支給開始年齢は
65歳です(共済は別)。しかし、男性は昭和36年4月1日生まれの人が64歳に到達する平成37年(2025年)4月1日以前は、女性は昭和41年4月1日生まれの人が64歳に到達する平成42年(2030年)4月1日以前は、支給開始年齢の引き上げ移行期間のため、それ以前に生まれた人は下表のように65歳に到達する前から部分年金を受け取ることができます

平成21年4月2日以降に60歳に到達した男性は、定額部分年金の支給開始年齢65歳への引き上げが完了しています(女性は平成26年4月2日以降60歳に到達する人が対象)。平成26年4月2日以降に61歳に到達する男性からいよいよ報酬比例部分年金支給開始年齢の引き上げが始まります(女性は平成31年4月2日以降に61歳に到達する人が対象)。
当事務所では、わかりにくい年金の仕組みのご説明から、将来のおおよその年金額の試算、有利な年金の受け取り方などのご相談を承っております。ご希望の方は下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。

 

 生年月日 報酬比例部分
年金支給開始
報酬比例部分年金
支給開始年齢到達日
定額部分支給開始(=全額支給開始)  全額支給開始年齢
到達日
 男) 昭20.4.2〜昭22.4.1 60歳 平17.4.2〜平19.4.1 63歳 平20.4.2〜平22.4.1
 女) 昭25.4.2〜昭27.4.1 平22.4.2〜平24.4.1 平25.4.2〜平27.4.1
 男) 昭22.4.2〜昭24.4.1 60歳 平19.4.2〜平21.4.1 64歳 平23.4.2〜平25.4.1
 女) 昭27.4.2〜昭29.4.1 平24.4.2〜平26.4.1 平28.4.2〜平30.4.1
 男) 昭24.4.2〜昭28.4.1 60歳 平21.4.2〜平25.4.1 65歳 平26.4.2〜平30.4.1
 女) 昭29.4.2〜昭33.4.1 平26.4.2〜平30.4.1 平31.4.2〜平35.4.1
 男) 昭28.4.2〜昭30.4.1 61歳 平26.4.2〜平28.4.1 65歳 平30.4.2〜平32.4.1
 女) 昭33.4.2〜昭35.4.1 平31.4.2〜平33.4.1 平35.4.2〜平37.4.1
 男) 昭30.4.2〜昭32.4.1 62歳 平29.4.2〜平31.4.1 65歳 平32.4.2〜平34.4.1
 女) 昭35.4.2〜昭37.4.1 平34.4.2〜平36.4.1 平37.4.2〜平39.4.1
 男) 昭32.4.2〜昭34.4.1 63歳 平32.4.2〜平34.4.1 65歳 平34.4.2〜平36.4.1
 女) 昭37.4.2〜昭39.4.1 平37.4.2〜平39.4.1 平39.4.2〜平41.4.1
 男) 昭34.4.2〜昭36.4.1 64歳 平35.4.2〜平37.4.1 65歳 平36.4.2〜平38.4.1
 女) 昭39.4.2〜昭41.4.1 平40.4.2〜平42.4.1 平41.4.2〜平43.4.1
 男) 昭36.4.2〜 部分年金は支給しない 65歳 平38.4.2〜
 女) 昭41.4.2〜 平43.4.2〜

 

A 65歳前に支給される年金(特別支給の老齢厚生年金)
65歳前に支給される年金を「
特別支給の老齢厚生年金」と言います。この年金は基礎年金部分に該当する「定額部分」を含んでそう呼びますが、老齢基礎年金の支給開始は65歳からと決まっているので「基礎年金」という文言は使用せず、あえて「定額部分」と呼んでいます。65歳以降の厚生年金部分に該当する年金は「報酬比例部分」と呼びます。
特別支給の老齢厚生年金には、この他、定額部分の支給開始以降家族の状況に応じて「
加給年金」があります。

1、定額部分
定額部分の年金額は、
1,676円×(給付乗率)×厚生年金被保険者期間月数×0.981
で算出します。給付乗率は昭和21年4月2日以降生まれの人には関係ないものです。

18歳の4月から働き始め、60歳の3月まで厚生年金に加入した昭和21年4月2日以降生まれの人は、
1,676円×504か月×0.981
としたいところですが、
期間月数は上限が480か月と決まっているため、480か月で計算します。よって、
1,676円×480か月×0.981=789,195円
となります。

2、報酬比例部分
報酬比例部分の年金額は、平成15年4月に総報酬制が導入されたことにより、それより前の分とそれ以後の分に分けて計算しなければなりません。
ア、平成15年3月以前の年金額は、
平均標準報酬額×給付乗率×厚生年金被保険者期間月数×1.031×0.981
イ、平成15年4月以降の年金額は、
平均標準報酬額×給付乗率×厚生年金被保険者期間月数×1.031×0.981
で算出します。昭和21年4月2日以降生まれの人の場合、アの給付乗率は7.5/1000、イは5.769/1000です。

先ほどの例の人の場合、アの期間の平均標準報酬月額が25万円、期間月数が408か月、イの期間の平均標準報酬額が30万円、期間月数が96か月とすると、
ア:250,000円×7.5/1000×408か月×1.031×0.981=773,729円
イ:300,000円×5.769/1000×96か月×1.031×0.981=168,043円
ア+イ=773,729円+168,043円=
941,772円
となり、この人の特別支給の老齢厚生年金額は、
定額部分+報酬比例部分=789,195円+941,772円=1,730,967円≒1,731,000円
となります。
当事務所では、こういったわかりにくい年金の仕組みのご説明から、将来のおおよその年金額の試算有利な年金の受け取り方、年金の裁定請求代行などのご相談を承っております。ご希望の方は下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。

3、加給年金
加給年金は、定額部分・報酬比例部分の年金に加え、下記のいずれかの条件を満たした場合に支給されます。
厚生年金被保険者期間月数が240か月以上ある受給権者が特別支給の老齢厚生年金が全額支給になった時点で、
 1、
65歳未満の配偶者(自身が240か月以上加入した老齢厚生年金等を受給できる場合は支給停止)
 2、
18歳の年度末までの間にある子及び障害等級1・2級の状態にある20歳未満の子
の生計を維持していること
加給年金の額は、
配偶者 第1子・第2子 第3子以降
227,000円 1人227,000円 1人75,600円
です。対象となる妻と子1人の場合、454,000円が加給年金として支給されます。

加給年金には、
特別加算というものがあります。配偶者が65歳に到達するまで支給され、昭和18年4月2日以降生まれの人の場合は、167,500円がさらに加算されます(支給停止要件は上に同じ)。

4、老齢基礎年金の繰上げ支給
部分年金が支給される範囲の年代の人は、老齢基礎年金の繰上げ支給を請求することができます。
ア、昭和24年4月1日以前生まれの男性及び昭和29年4月1日以前生まれの女性
→全部繰上げ又は一部繰り上げを選択できる
 ・
全部繰上げ…特別支給の老齢厚生年金の定額部分(65歳前から支給される部分)を支給停止にして、繰上げ請求によ           り減額された老齢基礎年金を受け取る。65歳以降も金額は同じ。
 ・
一部繰上げ…繰上げ請求により減額された特別支給の老齢厚生年金の定額部分と一部繰上げ請求により減額された
           老齢基礎年金を受け取る。65歳以降は繰上げ請求されていない部分の老齢基礎年金が加算される。
イ、昭和24年4月2日以降生まれの男性及び昭和29年4月2日以降生まれの女性(ウを除く)
→61歳から64歳の間に特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるので、その報酬比例部分と65歳か
  ら支給される老齢基礎年金との両方又は老齢基礎年金のみを繰り上げて受け取る。65歳以降も金額は同じ。
ウ、昭和36年4月2日以降生まれの男性及び昭和41年4月2日以降生まれの女性
→繰上げ支給はできるが、老齢基礎年金・老齢厚生年金を同時に繰上げ請求しなければならない。65歳以降も金額は同じ。
エ、繰上げ支給請求時の減額率
→繰上げ
請求をした月から、定額部分又は老齢基礎年金の支給開始年齢到達月の前月までの月数に、0.5%を乗じた率
(例)平成25年3月に定額部分の支給が開始される男性が平成23年9月に繰上げ請求をした場合
   
繰上げ期間18か月×0.5%=減額率9.0%

5、年金の繰下げ支給
平成19年4月2日以降に老齢厚生年金の受給権を得る(≒65歳に達する)者は、
66歳に到達するまでに老齢厚生年金の裁定請求をしていなければ66歳到達以降、厚生労働大臣(年金事務所経由)に申し出て老齢厚生年金の繰下げ支給を受けることができます(一定の要件・一部の例外あり)。
繰下げ支給申出時の増額率は、受給権取得月から支給繰下げの申出日の属する月の前月までの月数に、0.7%を乗じた率です。
(例)平成23年9月に老齢厚生年金の受給権を得た男性が平成25年3月に繰下げ支給の申出をした場合
   
繰下げ期間18か月×0.7%=増額率12.6%
当事務所では、こういったわかりにくい年金の仕組みのご説明から、将来のおおよその年金額の試算、有利な年金の受け取り方などのご相談を承っております。ご希望の方は下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。

B 65歳以降に支給される年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)
金額は、物価スライド等による調整分を除いてはAで説明した年金額と基本的には同じです。ただ、その名目が変化するだけです。
1、老齢基礎年金
20歳以上から60歳未満の期間の保険料納付済期間及び保険料免除期間等を基礎に計算します。保険料納付済期間には、厚生年金・共済保険加入期間及び国民年金第3号被保険者期間も含まれます。
計算式は、
788,900円×保険料納付済期間等÷480か月
です。

保険料納付済期間360か月、保険料未納期間120か月の場合、
788,900円×360か月÷480か月=591,675円
となります。

ところが、Aで挙げた例の人の場合、定額部分の年金として789,195円支給されていました。この人の場合は、
788,900円×480か月÷480か月=788,900円
と老齢基礎年金の基本額と定額部分との差額
789,195円−788,900円=295円
が生じるため、この295円を「経過的加算」として老齢厚生年金から支給します。

2、老齢厚生年金
計算方法の基本はAの報酬比例部分の年金と全く同じです。ただし、上記の「経過的加算」に該当する分が老齢厚生年金に振り替えられる分だけ老齢厚生年金の額の方が報酬比例部分の年金の額より多くなります。

3、加給年金
加給年金もAの金額と同様です。要件を満たす限り、引き続き加給年金を受給することができます。

 

C 在職老齢年金
年金を受給しながら厚生年金被保険者として働いていると、特別支給の老齢厚生年金(
定額部分を含む)や老齢厚生年金が支給停止されます。
1、65歳までの場合
→標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額を12で割った金額(
総報酬月額相当額=A)と加給年金額を除く年金額を12で割った金額(基本月額=B)との合計が28万円を超える場合に支給停止の対象となります。
支給停止額の
計算式
28万円以下 28万円超 
46万円以下 (A+B-28万)×1/2 A×1/2
46万円超 (46万+B-28万)×1/2+(A-46万) (46万×1/2)+(A-46万)
計算式だけではわかりづらいので、別表1支給停止額を示してあります。参考にご覧ください。

2、65歳以降の場合
総報酬月額相当額と基本月額との合計額が46万円を超える場合は、超えた額の1/2が支給停止されます。
支給停止額の計算式
(A+B-46万)×1/2
別表2支給停止額を示してあります。参考にご覧ください。
当事務所では、こういったわかりにくい年金の仕組みのご説明から、将来のおおよその年金額の試算、在職老齢年金や雇用保険との関係を勘案した、有利な年金の受け取り方などのご相談を承っております。ご希望の方は下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。
 

 

D 雇用保険の給付との調整
1、基本手当との調整
65歳到達前の老齢厚生年金
の受給権者(繰上げ受給者を含む)が雇用保険の失業手当(基本手当)を受給する場合、求職の申し込みを行った日の属する月の翌月から受給期間終了又は所定給付日数の全消化終了の日が属するまで(調整対象期間)、65歳到達前の老齢厚生年金は全額支給停止になります。
ただし、求職の申込の日から7日間の
待期期間とその後3か月の受給制限期間は、暦月1か月の間に1日も基本手当の受給日がなければ調整対象期間には該当しないため、年金は支給停止にはなりません

2、高年齢雇用継続給付との調整
65歳未満の在職老齢年金の受給権者が、高年齢雇用継続給付を受給する場合は、まずCにより年金の支給調整を受けた後、さらに下記の区分によって年金が支給停止になります。
区分 支給停止額
標準報酬月額が、みなし賃金月額61%未満のとき 標準報酬月額の6%
標準報酬月額が、みなし賃金月額の61%以上75%未満のとき 標準報酬月額の6%から一定割合(別表3)で漸減した額
標準報酬月額と高年齢雇用継続給付の額の合計が、344,209円(支給限度額)を超えるとき (支給限度額−標準報酬月額)×6÷15
標準報酬月額が、みなし賃金月額の75%以上のとき
又は、344,209円以上のとき
高年齢雇用継続給付が支給されないので併給調整なし

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