ある日突然会社が倒産した、今日解雇を言い渡された、会社になじめないので退職してしまった、などということは、現代の日本においては全く珍しいことではなくなってしまいました。失業の可能性はいつ、誰にでもあります。その万が一の事態のための備えとして雇用保険に加入することが労働者の最良の選択であり、事業主の最低の義務でもあります。 |
@ 雇用保険適用事業所 事業所が雇用保険適用事業所に該当する要件は、1人でも労働者を雇用していることです。この要件を満たした日から原則強制的に適用事業所になります(雇用保険法第5条1項)。 ただし、例外として、農林水産業の個人事業で常時5人未満の労働者を雇用する事業については、暫定任意適用事業所として、事業主が任意加入の申請をし、厚生労働大臣の認可があった日に雇用保険が適用されます(雇用保険法附則2条、同法施行令附則2条)。 A 被保険者 1、原則 雇用保険適用事業所に雇用される労働者で次の要件をいずれも満たす者については、事業主はその労働者を被保険者とするためハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出しなければなりません。 (1)週の所定労働時間が20時間以上の労働者 (2)引き続き31日以上雇用される見込みがある労働者 2、適用除外(同法第6条) 次の要件に該当する労働者は原則として雇用保険が適用されません。ただし、一定の条件を満たすことで雇用保険の被保険者になることがあります。 (1)65歳に達した日以後に雇用される者 (2)週の所定労働時間が他の労働者に比して短くかつ30時間未満であって、季節的雇用又は短期雇用に就くことを常態とする者 (3)日雇労働者であって、日雇労働被保険者に該当しない者 (4)4か月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者 などです。 B 届出 1、適用事業に関する届出(同法施行規則第141・142・145条) 事業主は、次に該当する事由が生じたときは、事業所の所在地を管轄するハローワークに届け出なければなりません。 (1)適用事業所を設置したとき…雇用保険適用事業所設置届(設置の翌日から10日以内) (2)適用事業所を廃止したとき…雇用保険適用事業所廃止届(廃止の翌日から10日以内) (3)事業主や事業所に関する事項に変更があったとき…雇用保険事業主事業所各種変更届(変更日の翌日から10日以内) (4)事務代理人の選任・解任等があったとき…雇用保険届出事務等代理人選任・解任届(その都度) 2、被保険者に関する届出(同法7条) 事業主は、その雇用する労働者について次に該当する事由が生じたときは、事業所の所在地を管轄するハローワークに届け出なければなりません。 (1)被保険者資格を得たとき…雇用保険被保険者資格取得届(資格取得の月の翌月10日まで) (2)被保険者資格を失ったとき…雇用保険被保険者資格喪失届・雇用保険被保険者離職証明書(資格喪失日翌日から10日以内。資格喪失日は離職日翌日を指す) (3)被保険者が他の事業所に転勤したとき…雇用保険被保険者転勤届(転勤の翌日から10日以内に転勤先の事業所の所在地を管轄するハローワークへ届け出) (4)被保険者が育児・介護休業を取得するとき…雇用保険被保険者休業開始時賃金証明書(休業開始日翌日から10日以内。事業主が育児休業基本給付金・介護休業給付金の請求を代行する場合は、初回の請求日まででよい) (5)勤務時間短縮等をした被保険者が離職し、特定受給資格者として受給資格を得ることとなったとき…雇用保険被保険者休業・勤務時間短縮開始時賃金証明書(資格喪失日翌日から10日以内) ア、一般被保険者がその小学校入学前の子を養育するための休業もしくは対象家族を介護するための休業をした場合 イ、小学校入学前の子を養育する被保険者もしくは対象家族を介護する被保険者に関して勤務時間短縮を行った場合で、その被保険者が離職し特定受給資格者として受給資格を得ることとなるとき (6)被保険者の氏名が変わったとき…雇用保険被保険者氏名変更届(速やかに) |
C 保険料 保険料は事業所が行う事業の種類により3つの区分に分かれています。また、保険料は失業等給付に関する保険料と雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)に関する保険料とに分かれており、前者は労使折半、後者は全額事業主負担になります。 1、雇用保険料率(平成23年度、現行分、労働保険徴収法第12条4項) 徴収法上は雇用保険料率は右端の料率になっていますが、同条5項の失業等給付にかかる雇用保険料率の弾力的調整の条項により、各事業の料率が0.4%引き下げられています。
・牛馬育成・酪農・養鶏養豚の事業 ・園芸サービスの事業 ・内水面養殖の事業 については、「一般の事業」の保険料率が適用されます。 2、保険料の計算 (1)労働者負担分…毎月計算、毎月徴収(事業所の預り金となる) 毎月支払われる賃金の総支給額に労働者負担分の雇用保険料率を乗じた金額がその月の保険料になります。よって、総支給額が少しでも変動すれば雇用保険料も変動します。 雇用保険料は毎月支払われる給料から天引きで徴収され、事業主により国に納付されます。 (2)事業主負担分…年1回年度更新時に計算、1回又は3回で国に納付 毎年度(4月1日から翌3月31日)労働者に支払った賃金の総支給額に労使合計の雇用保険料率を乗じた金額が事業所として支払うべき保険料の総額となり、そこから労働者負担分として預かっていた金額を差し引いた金額が事業主負担分となります。 実際には年度更新申告書には労働者負担分・事業主負担分の区分はなく、両者を合わせた金額を申告するようになっています。
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