社会保険労務士 五藤事務所

                               健康保険の加入

大正11年の健康保険法制定に始まった日本の医療保険制度は、昭和36年の国民皆保険実現以来、日本国民は何らかの医療保険制度に加入しなければならない義務を負い、及び何らかの医療保険制度に加入できる権利を得ました。
ここでは、被用者医療保険のしくみについて触れ、加入の義務とそのメリットについて見ていきたいと思います。
@ 被用者医療保険の種類
現在、被用者医療保険として3つの形態があります。
・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ、旧政管健保)…主に中小企業の労働者が加入
・健康組合管掌保険(組合健保)…大企業や特定の業界の労働者が加入
・共済組合(共済短期)…公務員や私立学校教員が加入
組合健保や共済組合は組合により扱いが大きく異なるため、このホームページでは被用者医療保険については協会けんぽの制度を中心に説明します。
A 協会けんぽの加入要件
下記の要件を満たす事業所及びその事業所に使用される労働者は、協会けんぽに加入しなければなりません。
1、事業所の加入要件(
強制適用事業所該当事業所)
(1)法人………業種を問わず強制適用事業所に該当(社長1人だけの法人でも適用になる
(2)個人事業
常時従業員5人以上を使用する法定16業種に該当する事業所は強制適用事業所に該当
法定16業種
 ・製造   ・建設   ・鉱業   ・電気供給   ・運送   ・貨物積卸  ・清掃  ・物品販売   ・金融保険  ・保管・賃貸 
 ・媒介周旋  ・集金・案内・広告  ・教育・研究・調査  ・保健・医療  ・通信・報道  ・社会福祉・更生保護事業 
(1)・(2)の要件のいずれにも該当しない事業所は任意適用事業所になります。なお、要件の「従業員」は被保険者となるべき従業員だけではなく、被保険者にならない従業員も含まれます
当事務所では、各事業主様に適切な健康保険への加入の促進と労働基準監督署からの指導防止のためのアドバイスをさせていただいております。ご希望の方は、下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。 
2、従業員の加入要件(勤務先が強制適用事業所・任意適用事業所を問わず)
、通常、強制適用事業所で働く75歳未満の正規職員は健康保険の被保険者になります。被保険者資格取得日は入社日です。近年、「試用期間中は社会保険には入れない」という会社が目立ちますが、

入社から2か月以内の試用期間を定めて雇用契約し試用期間終了後改めて本採用の契約を結ぶ場合はそれが認められますが、

入社時の雇用契約の内容で雇用の期間の定めがない又は契約期間が2か月超である場合はそれは認められません

また、
(1)日雇い従業員…1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合はそのときから
(2)
季節的業務の従業員…当初から継続4か月超の予定で使用される場合は当初から
(3)
臨時的事業の従業員…当初から継続6か月超の予定で使用される場合は当初から
それぞれその日に被保険者資格を取得します。
なお、
事業所の所在地が一定しない事業の従業員国保組合の従業員等は被保険者資格を取得することはできません。
、短時間労働者(パート・アルバイト等)については、下記の要件をいずれも満たす場合は、適用事業所の事業主はその労働者を健康保険に加入させなければなりません。
 1、正規職員に比べて、週の所定労働時間がその4分の3以上であること
 2、正規職員に比べて、月の所定労働日数がその
4分の3以上であること
やはり、近年経費削減のため、この要件を満たす短時間労働者又はフルタイムパート・アルバイトでさえ健康保険に加入させない事業所が増えています。短時間労働者の皆さんは、自分が上記の要件をいずれも満たしているか確認し、満たしているにもかかわらず健康保険に加入させてもらえない場合は労働者の権利として会社に加入を申し入れましょう。
当事務所では、労働者の皆さんの健康保険加入促進のため、事業主との交渉や労働基準監督署への告発状作成・提出代行等のサポートをさせていただいております。ご希望の方は、下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。 

B 被扶養者要件その1(奥様編
「私は主人の扶養に入っているから扶養の範囲内で働きたい」、「130万円の壁ってなんですか?」といった要望や疑問をあちらこちらでよく目にします。世の奥様方はいわゆる「103万円の壁」・「130万円の壁」・「141万円の壁」といった収入のラインは頭にあるものの、実際それが何の意味を持つのかよく理解していない人がいます。ここでは、奥さんを対象に、「130万円の壁」の説明のついでに他の2つの壁についても説明しましょう(子や。

1、130万円の壁

130万円の壁は、
健康保険及び国民年金において健康保険被保険者及び被用者年金被保険者の被扶養配偶者になれるかどうか、つまり扶養に入れるかどうかの基準となる給与収入です。
130万円の壁を超えるか否かは、被保険者であるご主人が会社に被扶養者異動届を提出する時点で、
奥さんが、将来に向かって安定的に月額108,333円を超える収入を得ることが見込めるかどうかで判断します。

したがって、正社員として働いていた奥さんが7月末に仕事を辞めた場合、1月から7月までの給料がたとえ1,000万円あろうとも、
その後一切収入がなければご主人の扶養に入ることができます。
しかし、また違う仕事をしようと考え、
雇用保険から失業手当を日額3,612円以上受給できるようになると、月額108,333円を超える収入が得られる状態になるため、ご主人の扶養から外れなければなりません。その間は、奥さん本人が自分で国民健康保険や国民年金(第1号被保険者)に加入して保険料を負担しなければなりません。

2、103万円の壁141万円の壁
103万円の壁は、所得税・住民税のお話です。ご主人は会社で年末調整をします。そのときに「平成○年分給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」及び「平成○年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の2枚の申告書を提出します。
ここで、配偶者である奥さんの「
年内の見込み給与収入(実際には、「所得の見積額」であり、ここでは便宜上給与収入と表示)を2枚ともに書いて提出しますが、この「年内の見込み給与収入」が103万円を超えると、ご主人の配偶者控除対象者から外れてしまい、配偶者特別控除対象者に移されてしまいます。
それと同時に、
奥さん自身の収入に所得税・住民税が課税されます。「103万円の壁という言葉の由来はここにあります。
配偶者控除はご主人の収入から一律38万円(住民税は33万円)の控除が受けられます。
一方、
配偶者特別控除は奥さんの収入が増えるにつれてご主人の収入からの控除額が減っていき、給与収入141万円で控除額がゼロになる仕組みになっています(右表、住民税は※の区分の控除額が33万円)。141万円の壁という言葉の由来はここにあります。
給与収入 控除額 給与収入 控除額
※103万超105万未満 38万円 125万以上130万未満 16万円
※105万以上110万未満 36万円 130万以上135万未満 11万円
110万以上115万未満 31万円 135万以上140万未満 6万円
115万以上120万未満 26万円 140万以上141万未満 3万円
120万以上125万未満 21万円 141万以上 なし 
当事務所では、それぞれのご家庭の事情により社会保険・労働保険の観点から、一番お得かつ安心できる働き方のご提案をさせていただいております。ご希望の方は、下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。 
C 被扶養者要件その2(子ども編
子どもも高校生や大学生にもなると小遣いや学費稼ぎのため、アルバイトをしたいと言い出します。しかし、子どもの場合も注意していないと、うっかり扶養家族から外される事態に陥ることになります。

1、130万円の壁

考え方は、奥様編と全く同じです。
将来に向かって安定的に月額108,333円を超える収入を得ることが見込める場合は、健康保険の被扶養家族から外され、子ども自身が自分で国民健康保険やアルバイト先の健康保険に加入しなければなりません。

2、103万円の壁

こちらも考え方は、奥様編と全く同じです。お父さんの年末調整の時の「平成○年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「年内の見込み給与収入」を書き、その額が103万円を超えると扶養控除対象者から外れてしまいます
それと同時に、子ども自身の収入に所得税・住民税が課税されます

 
D 被扶養者要件その3(高齢者編
自分の親も年老いて年金暮らしになったのでそろそろ自分の扶養家族に入れようか、そう考えたとき、収入がいくらだったら扶養家族にできるのか、それをここで説明します。

1、130万円
180万円の壁
60歳以上75歳未満の親等を健康保険の扶養家族に入れたい場合は、その人の収入が年間180万円未満でなければなりません。年金生活者の場合は、その額が月額150,000円未満でなければ被扶養者にすることはできません。
扶養家族が
75歳に到達したときは、その人は後期高齢者医療制度の被保険者になりますから、被扶養者資格を喪失します。

2、103万円
108万円の壁(65歳未満
60歳以上65歳未満の親等の場合は、「
年内の見込み収入」が年金収入のみの場合108万円未満(本人の年金控除最低70万円+基礎控除38万円)であれば、扶養控除対象者として扶養家族に入れることができます。

3、103万円158万円の壁(65歳以上
65歳以上の親等の場合は、「年内の見込み収入」が年金収入のみの場合158万円未満(本人の年金控除最低120万円+基礎控除38万円)であれば、扶養控除対象者として扶養家族に入れることができます。

E 被扶養者要件まとめ
健康保険の被扶養者として認定されるためには、次の要件を満たす必要があります。
1、被保険者との続柄
ア、被保険者の直系尊属(親・祖父母・曽祖父母…)、配偶者(内縁者含む)、子(実子・養子問わず)、孫、弟・妹
イ、被保険者の3親等以内の親族(血族・姻族問わず)でアを除く者
ウ、被保険者の内縁者の父母及び子
2、生計維持要件
(1)アに該当する者
被保険者に
生計を維持されている者(B〜Dの収入未満であり、かつ被保険者の収入の半額未満であること)
(2)イ・ウに該当する者
被保険者と
同一世帯で、被保険者に生計を維持されている者(同上)

例えば、被保険者の実の弟は離れて住んでいても生計を維持していれば被扶養者にすることができますが、実の兄は一緒に暮らして生計を維持していなければ被扶養者にすることができません。

当事務所では、それぞれのご家庭の事情により社会保険・労働保険の観点から、一番お得かつ安心できる働き方のご提案をさせていただいております。ご希望の方は、下記リンクの「相談したい」からお問い合わせください。

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