遺言書というと、どことなく堅苦しい格式ばったものをイメージしますが、実際にはそのようなことはなく、自分の希望を素直に書面にすればいいだけです。ここでは、遺言書にまつわる、最低限の決まりを紹介します。 |
@ 遺言書に書かなければならないこと せっかく遺言書を書こうと思い立っても何を書いていいものか頭を抱えてしまっては何にもなりません。まずは、遺言書に何を書かなければならないのか、自筆証書遺言を例に最低必要事項に絞って挙げていきます。 |
1、タイトル「遺言書」 2、どの予定相続人に何を相続させるか特定して明記する 3、財産の記入漏れを想定して、記入漏れがあった場合の処理方法を明記する 4、遺言執行者を指名する 5、付言事項…遺族に伝えたいことがあれば自由に記入する 6、作成年月日 7、住所の記入、署名・捺印(実印が望ましい) |
以上の内容を、 ・丈夫な紙に ・容易には文字が消滅しない筆記具で ・一言一句間違いなく記入すること が必要で、 ・作成した遺言書を封筒に入れて密封・封印すること が望ましいと言えます。 遺言書の作成を円滑に進めるために、印鑑登録証明書、戸籍謄本、予定相続人のリスト及び財産のリストは必ず前もって準備しておきましょう。 |
A 予定相続人のリスト 詳細・例外は「相続のページ」で説明しますが、「法定相続人」は民法第900条各号に定められており、原則として下記の通りになっています。 一、子及び配偶者(夫又は妻) 二、配偶者及び直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母…) 三、配偶者及び兄弟姉妹 常に配偶者は法定相続人であり、以下、子・直系尊属・兄弟姉妹の順で相続順位が定められています。 直系尊属は遺言者の死亡時、その子が存在していれば法定相続権は発生せず、兄弟姉妹は子又は直系尊属が存在していれば法定相続権は発生しません。 |
B 財産のリスト(財産目録) 財産のリストは、遺言書作成の時点で存在する自分の財産を挙げればよく、預貯金・有価証券・不動産等の資産と共に、負の財産である借金についても挙げる必要があります。 遺言書には、財産を特定できるよう正確な口座番号・名称・地番・会社名等の明記が必要ですから、預金通帳、有価証券のリスト、不動産登記事項証明書、金銭消費貸借契約書(借用書等も可)等を準備して財産のリストを作成しましょう。 |
C 遺言書作成時に絶対的に注意すべきこと 例えば、奥さんの尻に敷かれ続けてきた夫の遺言書が夫の死後発見されたとしましょう。 その内容には、「妻には一切の財産を相続させない。全て子の〇〇に相続させる。」と書かれていました。 さて、妻は本当に一切の財産を相続することはできないのでしょうか? 答えはです。民法第964条但書に「遺留分に関する規定に違反することができない」と定められています。 民法第1028条には「遺留分」についての規定があり、相続分についてのいわば最低保障のようなものが定められています。子がある妻の場合は、全財産の2分の1の2分の1、つまり全財産の4分の1が遺留分として保障されます。 ですから、夫の遺言書の前述の部分はこの規定に反しており、妻には全財産の4分の1を遺留分として相続する権利がありますから、子に対して「遺留分減殺請求」を行い、遺留分を取り戻さなければなりません。 いくら親や妻子に遺恨があっても、全く財産を相続させないことはできませんから、基本的にはいくらかを相続させるという文言になります。詳しくは、「遺言の例」に示します。 |